最高裁判所大法廷 昭和42年(し)7号 決定 1968年6月12日
主文
原決定を取り消す。
本件を東京高等裁判所に差し戻す。
理由
本件抗告の趣意は、別紙特別抗告申立書、同補充書(二通)記載のとおりである。
記録を調査すると、木田史郎こと渋谷史郎は、同人に対する詐欺被告事件および有価証券偽造、同行使被告事件につき、昭和三九年六月二四日東京高等裁判所の保釈許可決定により釈放されたこと、その保釈保証金額は、右詐欺被告事件につき四五万円(うち一五万円は保証書をもつて代える)、右有価証券偽造、同行使被告事件につき一五万円(うち五万円は保証書をもつて代える)であつたが、同人の弁護人斉藤一好は、右保証金額中に含まれている二通の保証書(額面合計二〇万円)を差し出し、かつ、現金のうち二五万円を納付したものであること、渋谷史郎は、前記各被告事件について、昭和三九年六月一〇日東京高等裁判所において懲役三年に処せられ、右判決は同四一年五月二六日確定したが、同人はその後所在不明となつたため、同年一二月一二日東京地方裁判所は、検察官の請求により、前記保釈保証金全部を没取する旨の決定をしたこと、右決定に対し斉藤一好から抗告の申立がなされたが、原決定は、同人は右保釈保証金没取決定に関しては、刑訴法三五一条にいう被告人でないことはもちろん、同三五二条にいう被告人以外の者で決定を受けたものにも該当せず、また、右保釈保証金没取決定を受けた者である渋谷史郎から右抗告につき委任を受けた形跡も存しないとの理由により、右抗告を不適法として棄却したものであることが明らかである。
しかし、被告人以外の者が保釈保証金もしくはこれに代わる有価証券を納付し、または保証書を差し出すのは、直接に国に対してするのであり、それによつてその者と国との間に直接の法律関係が生ずるのであつて、その還付もまた国とその者との間で行なわれるのである。してみれば、この場合の保釈保証金を没取する決定は、その者の国に対する保釈保証金もしくはこれに代わる有価証券の還付請求権を消滅させ、またはその者に対して保証書に記載された保証金額を国庫に納付することを命ずることを内容とする裁判だといわなければならないから、その者はまさしく刑訴法三五二条にいう「検察官又は被告人以外の者で決定を受けたもの」に該当し、その者も没取決定に対し不服の申立(抗告)をすることができると解するのが相当である。これと異なり、このような者は、みずから不服の申立をすることができないとした当裁判所の判例(昭和三一年(し)第二五号同年八月二二日第二小法廷決定、刑集一〇巻八号一二七三頁、昭和三三年(し)第八四号同三四年二月一三日第二小法廷決定、刑集一三巻二号一五三頁)は、これを変更すべきものと認める。
したがつて、斉藤一好の前記抗告を不適法として棄却した原決定は、刑訴法三五二条の解釈を誤つた違法があり、これを取り消さなければいちじるしく正義に反するといわなければならない。
所論は、憲法三一条、二九条違反、判例違反を主張するが、原決定が、前記のとおり、法令解釈の点において取り消されるべきものである以上、その誤つた法令解釈を前提とする所論違憲の主張は、その前提を欠くにいたり、また、保釈保証金没取決定に対し、事後に不服申立の途が認められれば、予め告知、弁解、防禦の機会が与えられていないからといつて、所論のように原決定が違憲とは認められず、所論引用の判例は、本件に適切でない。
以上の理由により、原決定を取り消し、更に本件抗告の当否にき審理させるため、本件を原裁判所に差し戻すべきものとする。
よつて、刑訴法四三四条、四二六条二項により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。(横田正俊 入江俊郎 奥野健一 草鹿浅之助 長部謹吾 城戸芳彦 石田和外 田中二郎 松田二郎 岩田誠 下村三郎 大隅健一郎 松本正雄 飯村義美)
申立人斉藤一好の抗告趣意(昭和四二年一月二五日付)
一、原決定は、「抗告人斉藤一好は前記保釈決定当時前記被告人(当時は木田史郎)の弁護人であるとともに前記保証金額中に含まれている二通の保証書(額面合計二〇万円)を差し出し、かつ現金のうち二五万円を納付したものであるにとどまり、本件没取決定に関しては刑事訴訟法第三五一条にいう被告人でないことはもちろん同法第三五二条にいう被告人以外の者で決定を受けたものにも該当しないことは明らかである。(昭和三一年(レ)第二五号同年八月二二日最高裁判所第二小法廷決定参照)また同抗告人が本件没取決定を受けたものである木田史郎こと渋谷史郎から本件抗告につき委任を受けた形跡も存しないので結局本件抗告は不適法であり、同法第四二六条第一項により棄却すべきものである」と述べている。
二、しかしながら、斉藤一好は本件没取決定によつて、納付した保証金を没取され、保証書によつて保証した金額の支払いを余儀なくされようとしているのであつて、本件の決定の効力を受ける当事者そのものである。
にもかかわらず、もし原決定の理由に述べるように、本件没取決定は被告人に対するものであり、その決定の名宛人ではない、したがつてこの手続には参加できず、抗告もできないというのであれば、これこそ憲法第三一条の適法手続きがまつたく保障されないことになる。したがつて刑事訴訟法の規定を原決定のように解釈することが違憲であり、また刑事訴訟法が原決定のようにしか解釈できないとすれば刑事訴訟法そのものが違憲である。
憲法第三一条の、「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」との規定が、適法な手続を保障したものであることは通説であり、適法な手続きとは、「近代諸国法において自由の保障のためにもつとも妥当な手続として歴史的に形成されたひとつの手続を予想し、」「そのこまかい内容は、時と所によつて、非常にちがうが、関係者の異なる意見相互間の弁証法的対決手続にもとづいて裁断が与えられることを核心とする手続であることについては、ほぼ一致している」(宮沢俊義著日本国憲法コンメンタール二八四頁)あるいは、「憲法の精神と現代の法律文化によつて決せられるという外あるまい。例えば、実体法においては、構成要件の内容が漠然としていたり、極めて広いものであつたりした場合、訴訟手続においては被告人の防禦権を実質的に制限した場合、などにおこるであろう。」(法学協会註解日本国憲法上巻五九〇頁)「被告人の言分を充分聴取(rechtliche Gef〓r)しないで処罰したり」したときなどのように、「憲法のどの条文に反すると明かにはいえないが、憲法の精神に反するといわざるをえない場合がある。このような場合は本条によつて救済するのが妥当である。」(同五八八頁)とされれている。
また「刑罰を科せられない」という「刑罰」に、固有の意味の刑罰のほかに、秩序罰や執行罰を含むと解されることを当然のこととされている。(前掲各書)
原決定は、また没取の対象たる弁護士を手続きに干与させないで、その財産権をうばうことになり、所有権を保障した憲法第二九条にも違反する。
昭和三七年一一月二八日の最高裁大法廷判決(刑集一六巻一一号一五七七頁)は、第三者所有物の没取について、その第三者に告知をなし、その者に参加及び陳述の機会を与えなければならないとしているが、これはまさに以上の法理を明快に示したものであり、原決定は真向からこれに違反していることは明らかである。
三、以上の次第であるから、原決定は第一に憲法第三一条第二九条に違反し、第二には前記最高裁大法廷の判例に違反しており、取消しをまぬがれない。
申立人斉藤一好の抗告趣意補充(昭和四二年一月二六日付)
一、右にかゝる保釈保証金没取請求事件について、原決定は、本件保釈保証金没取決定によつてその意思に反し財産上の不利益を科せらるべき弁護士の陳述を聴く必要がないものとし、これに告知、弁解、防禦の機会を与えず、また不服申立の手続きも保障しなかつた点および刑事訴訟法がそのような手続きを保障しなくても違憲でないとの前提に立つている点で昭和三七年(ク)第六四号昭和四一年一二月二七日大法廷決定の、「原則として過料の裁判をする前に、当事者(過料に処せられるべき者)の陳述を聴くべきものとし、当事者に告知・弁解・防禦の機会を与えており、例外的に当事者の陳述を聴くことなく過料の裁判をする場合においても、当事者からの異議の申出があれば、右の裁判はその効力を失い、その陳述を聴いたうえ改めて裁判をしなければならないことにしている。
しかも、過料の裁判は理由を付した決定でこれをすることとし、これに不服のある者は即時抗告をすることができ、この抗告は過料の執行停止の効力を有するものとするなど、違法・不当に過料に処せられることがないよう十分配慮しているのであるから、非訟事件手続法による過料の裁判は、もとより法律の定める適正な手続による裁判ということができ、それが憲法三一条に違反するものでないことは明らかである。」との判例に違反する。(民事上の過料の制裁に関する本判例の趣旨は、刑事上の没取の制裁にも、あてはまることは明らかであろう。)
(裁判所時報第四六五号参照)
右抗告申立書を補充する。
以上申立人斉藤一好の抗告趣意補充(二)
(昭和四二年六月二〇日付)
第一、原決定は憲法第三一条の適法手続の保障を欠き、違憲である。
一、原審たる東京高等裁判所は保釈保証金没取決定に対する抗告申立を棄却し、その理由として、「抗告人斉藤一好は、保釈決定当時、被告人の弁護人であるとともに、保証金額中に含まれている二通の保証書(額面合計二〇万円)を差し出し、かつ現金のうち二五万円を納付したものであるにとどまり、本件没取決定に関しては、刑事訴訟法第三五一条にいう被告人でないことはもちろん、同法第三五二条にいう被告人以外の者で決定を受けたものにも該当しないことは明らかである。(昭和三一年(レ)第二五号同年八月二二日最高裁判所第二小法廷決定参照)また同抗告人が本件没取決定を受けたものである木田史郎こと渋谷史郎から本件抗告につき委任を受けた形跡も存しないので結局本件抗告は不適法である。」とする。
二、そうして抗告人が抗告の理由として述べた
(一) 保証金を納付しかつ保証書を差し入れた抗告人斉藤一好が本件没取決定によつて実質的不利益を蒙る者であり右斉藤に何ら意見を述べべる機会を保証されずになされた原決定は憲法第三一条、二九条に違反するものである。
(二) 抗告人斉藤一好は被告人に対する刑の執行の支障なく行なわれるような検察当局にあらかじめ注意を喚起し、積極的に協力していたこと。
(三) 右のような抗告人の注意喚起や協力にもかかわらず、東京高検は当時被告人は別件で東京地裁で審理を受けており容易に執行できたにもかかわらず漫然横浜地検に執行を嘱託し、又横浜地検は抗告人の意見を聴くことなく、全く無関係な別件事件の弁護人の依頼により本件の刑の執行着手を延期し、その間に被告人は逃亡するに至つたこと。
(四) その後抗告人は被告人の立ち廻り先等について可能な限りの努力をして情報を提供し、抗告人の右協力もあづかつて被告人は収監されるに至つたこと等の点について判断の余地のないものとして、一顧も与えなかつたのである。
三、そこで被告人はあらたに弁護士徳満春彦を代理人として委任し、東京高等裁判所に保証金没取決定に対する、抗告申立を別になし(同庁昭和四二年(く)第一一号)その中で前記各理由を主張し、その判断を求めた。
四、しかるに右抗告申立に対し、東京高等裁判所はこれを棄却するとの決定をなしたが、その理由中で斉藤一好に関係する前記(一)(二)(四)の被告人の主張については何ら判断するところがなかつたのである。
すなわち右棄却決定は、ただ「被告人は昭和四一年一二月下旬みずから検察庁に出頭し収監されるに至つたとはいえ、それは原決定後であるばかりでなく、被告人は実に五箇月余も行方をくらましてその間検察庁が多大な労力を費して捜査活動をした末のことと認められるのであつて、所論のように「刑の執行確保という目的は達成され、没取決定の実質的根拠は消滅した」とはとうていいいがたく、保釈保証金制度の目的とする所期の効果はむしろ得られなかつたものといわなければならない。又所論のように被告人の刑の執行確保については、検察官に過失があるとも認められない。」と判断するのみであつた。
五、これは右棄却決定が没取すべき額について裁量するについては、弁護人に存する事情については本来考慮すべき事情に入らないとの前提をとつていることを示している。
これでは、保証金を納付し、或いは保証書を提出した弁護人が没取決定によつて実質上財産権を侵害されたとして自らの名で裁判所の判断を求めんとすれば適格なしとして拒否され、又被告人のなす抗告審の手続中でその主張をなさんとすれば、法的に参加乃至陳述の機会が保証されていないばかりか、事実上も何らの顧慮がなされないのである。
もし没取決定の手続きが、以上のように進められることを許すならば、実際に財産権を侵害される当の弁護人は沈黙をしいられ手続に参加することができないこととなり、近代憲法の大原則の一つである憲法三一条の適法手続が全く保障されないこととなる。従つて原決定はこの点で違憲であり、とうてい破棄をまぬがれないことが明らかである。
第二、最高裁第二小法廷決定の誤
一、原決定は保証金納付者であり、保証書提出者である斉藤一好がその名でなした抗告申立を棄却する理由として、同人は刑事訴訟法第三五二条にいわゆる「被告人以外の者で決定を受けた者」に該当しないことは明らかとして、最高裁判所第二小法廷の昭和三一年八月二二日の決定を引用する。しかし右最高裁決定は、法令の解釈を誤つたもので、変更を免れないと信ずる。
二、すなわち本件保釈の請求人は、弁護人たる斉藤一好であり、本来保釈決定で保証金の納付義務を命ぜられる者は保釈請求者である。すなわち刑事訴訟法第九四条第二項は「裁判所は保釈請求者でない者に保証金を納めることを許すことができる。」旨規定しているところからも明らかなように、法律は保釈保証金の納付者は本来保釈請求者であることを予定しているのである。すなわち保釈許可決定の名宛人は保釈請求者であつて被告人自身でないと解するのが相当である。被告人が右保釈許可決定で、保釈されるのはその事実上の効果であるにすぎない。しかして本件の保釈請求者は、斉藤一好であるから、その没取決定の名宛人も斉藤一好でなければならない。原決定が斉藤一好がその名でなした抗告申立を刑事訴訟法第三五二条にいわゆる「被告人以外の者で決定をうけたもの」でないと解し、不適法として棄却したのは決定に影響を及ぼす法令の解釈を誤つたもので、これを破棄しなければ著しく正義に反すると信ずる。
三、仮りに保釈許可決定の本来の名宛人が被告人であり、被告人が釈放されるのは右決定の本来的効果であるとしても、このことは右保釈許可決定に含まれる保釈保証金納付命令の名宛人、すなわち右保釈保証金没収決定の名宛人が当然に被告であると解することはできない。通常の場合、保釈保証金納付者が事実上被告人自身であることがまれではないことから、右の両者を区別することなく、漫然と保釈許可決定の名宛人が、同時に取扱上保釈保証金納付命令の名宛人とされているにすぎないのである。
右は左記の各理由から認められる。すなわち、
(1) 刑事訴訟法第九四条第二項第三項は「裁判所は、保釈請求者でないものに保証金を納めることを許すことができる。裁判所は、裁判所の適当と認める被告人以外の者の差し出した保証書を以つて保証金に代えることを許すことができる。」と規定する。右は、保釈保証金納付者乃至保証書提出者があらかじめ自己が納付ないし提出したい旨の申請をなし、これに対して、裁判所が許可を与えることを意味している。つまり、保釈許可決定書で、被告人以外の者に保証金の納付を許可し、又は保証書をもつて保証金に代える旨の許可決定をなしているときには、単に被告人に対する保釈許可決定があり、その条件について被告人以外の者にも事実上の効果が及ぶのではなく、決定は、被告人と保証金納付者乃至保証書提出者の両者に対してなされた二個の決定がある(あるいは一個の決定について名宛人が複数ある)と解すべきである。
本件の場合斉藤一好に保釈許可決定書、並びに保証書名義人変更決定書が送達されていることは、このことを示している。
(2) 刑事訴訟法は、被告人自身が保証金を納付する本来の制度の他に、被告人以外の者に保証金の納付を許す制度や、保証書提出を許す制度を設けたが、これは被告人以外の者に被告人の出頭確保につき身柄引受人的役割を期待し、被告人以外の者に身柄引受人的役割を負担させることを代償として保釈を幾分でも緩和しようとの配慮に基くものである。従つて裁判所は右の許可を与えるについては右の者と被告人との人的関係、監督の実を挙げうるか等を検討するのであつて単に事実上の保証金納付の方法を定めるものではないのである。すなわち保証金納付者乃至保証書提出者は、右の身柄引受人たる立場よりする独自の法的地位を有する者であつて、単なる事実上の金銭負担者ではない。
(3) 保証書による保証の性質については、民法の保証とは異なり、本人の債務の支払いを保証するものではなく、単純に、一定の場合に保証金を納付する義務を負担するとともに、被告人が保証を取り消された場合には保証金相当額を没取される危険を負うものであるが、右の性質からいつても保証書提出者は、被告人とは独自の法的地位に立ち、右は裁判所の正式の保証書提出許可決定にもとづくものである。
(4) 没取裁判の執行については、保釈保証金が現金又は有価証券により納付されているときは、裁判所又は裁判官の指揮により保釈保証金没取決定に基き裁判所職員がこれを執行し、(刑訴法四七二条一項但書、昭和二四年二月二三日最高裁判所刑二第二〇六七号刑事局長、経理局長通達参照)保証書が提出されているときは、没取決定に基き、検察官の命令によつて執行する。(刑訴法四九〇条)
本件の場合、本件没取決定に基き、納付した保証金は裁判所職員により、保証書の分は検察官の命令でそれぞれ斉藤一好が執行を受けることになることは明白である。このことは、右没取決定の名宛人が斉藤一好であることを物語つている。
(5) 凡そ裁判において、その効力の及ぶ主観的範囲は何であるかは、極めて重大な問題であり、例えば民事訴訟法においては二〇一条を設け、判決の主観的範囲を、原則として当事者となし、当事者と同視すべき地位にある者(口頭弁論終結後の承継人等)、に限つて、拡張しているにすぎないのである。そうして当事者として表示された者以外の者に執行する場合には、とくに裁判官の命令ある場合に限つて執行文を附与すべきものとする等(民訴法五二〇条、四九七条ノ二)いやしくも第三者に不当な侵害が及ばないよう慎重な手続がとられている。(民訴法五二〇条二項、五二二条)しかも注目すべきことは、当事者以外の者に裁判の効力の拡張がなされ、その者の権利が侵害される場合には、かかる第三者に必ず不服申立の法的手段が保証されていることである。
今原審のいうごとく、本件没取決定は被告人木田史郎こと渋谷史郎に対してなされたものであり、しかも現実に財産権の侵害をうける斉藤一好に不服申立権が保障されないとすれば、右被告人に対する没取決定の効力及びその執行が斉藤一好にまで拡張されるいわれはないのである。